エルダー・スクロールズ・オンラインが Tamriel Unlimited となって初めてリリースされた、探索をベースにした大型DLC「オルシニウム」が1周年を迎えました。 オークをテーマにした政治が関わるストーリーはESOの物語に大きな変化をもたらしました。 今回の開発者独占記事では、私たちがロスガーに戻ってからの1年間で学んだ5つのことをゼニマックスのMatt Firor自身が記録しています。 ── オルシニウムはESOのために開発された初の「探索」をベースにしたDLCです。 目的は単純なもので、元からあるゾーンのすばらしい物語と伝統を引き継ぎつつ、私たちにできる最高のPvEを体験してもらうことです。 オルシニウムは2015年11月にリリースされました。 オルシニウム本来の開発目的は、ESOの開発と、PCでは18ヶ月、コンソールでは5ヶ月提供を続けるなかでの改良の両方から学んだ全てのことを生かした新しいゾーンを作ることでした。 開発スキルを向上させるため、そして、プレイヤーに対してゲームをいかに最適化し、展開していくのかという今後の基礎を築くために、オルシニウムは非常に重要なDLCでした。 初期の段階からESOにご参加いただいているプレイヤーのみなさまは、オルシニウムを振り返り、本編を超えるその演出とゲームプレイに、改善の効果をはっきりと感じたでしょう。 さらに、過去最大のアップデート、One Tamrielの基礎を築くうえでオルシニウムが果たした重要な役割にも気付いたはずです。 オルシニウムの製作とリリースから学んだいくつかの大きな教訓、オルシニウムに対するプレイヤーの皆様の反応、今後のESOでこのDLCが担う重要な役割をご紹介します。 1. 平面的な町が立体的になれば遥かに素晴らしくなる - しかし、移動はやや難しくなる。 ESOの開発中に内部から一貫して出ていた意見の1つが、私たちの町は生きているようには全く感じられないというものでした。 エルダー・スクロールズに関して有名なものの1つが市民と店主、独特な建築物、そして、数十年、数世紀にわたって住み続けることで生まれる無計画な複雑さを持ち合わせた人生と一体化している町です。 しかし、当時、私たちは自分たちが思い描く、本当に生きているように感じられる町を作ることのできる技能や工学技術を全くといっていいほど持ちあわせていませんでした。 「いくつかの建物が地面にどんと落ちていた」というのが内部のプレイテストで得られた代表的な意見でした。 アリクル砂漠のセンチネルがこの問題との格闘の例です。 当時持っていたツールで最善を尽くし、結果は一般的には「合格」といえるようなものではありますが、思い描いていたような荘厳で興味深い町からは程遠いものです。 それに反して、オルシニウムの町はオークの伝説的な首都です。 そして、私たちはその町が進歩に見合う、感動を見て感じることのできるものであるとわかっていました。 そのため、アートチームは目標の1つとしてDLCゲームパックの柱となる環境を作ることに焦点を当てていました。 町そのものが興味深く印象的なものでなければならず、それはすなわち町のデザインを立体的にするということでした。 オルシニウムを初めて訪れると、特に曲がりくねった路地や階段といったより現実的な配置に加え、他の建物に接するように経つ膨大な建物の数にプレイヤーがすぐに圧倒されるのは、これが理由です。 細部と縦の深さに注目することで、オルシニウムにさらなる中世らしさと立体感を持たせ、町をDLCで最も重要な「キャラクター」の1つとしています。 オルシニウムをリリースしたとき、プレイヤーはすぐに町の建設能力が進化していることに気付き、その外観を間違いなく気に入っていました。 しかし、時折、どう動いたらよいのか悩まなくてはならなかったのも事実です。 細かさと複雑さのせいで、プレイヤーは移動の際にはより慎重にならねばならず、暗い小道や裏通りでは道に迷う危険もはらんでいました。 この町の建築技術は大成功を収めて人気を博し、当時開発中であった次のDLC、盗賊ギルドにも適用されました。 そのDLCのメインの町であるヒューズベインはオルシニウムの町と同じツールと原理を用いて建設されました。 それどころか設計方法はさらに進化し、アートチームの作業はより細部にわたるものでさえありました。 2. PvEではレベルスケーリングが実によく機能する 開発初期、オルシニウムの主要設計に関して行われていた議論の1つが各コンテンツをどのレベルにするかというものでした。 これは、この種のゲームのデザイナーが新しいコンテンツを開発するうえで最も重要となる議論の1つです。 誰のために?どのレベルで?新しいプレイヤーの関心を引きたいのか、それとも熟練のプレイヤーを引き付けたいのか? オルシニウムに関する議論はそこから始まりましたが、最終的な決定はおもしろいものでした。 最初のDLCであるインペリアルシティに着手したのです。インペリアルシティでは(主にPvPを基本としていたので)誰もが常に対等でいられるPvPのレベルスケーリングを使用していました。 私たちは「ゲームのPvPエリアで使用されているレベルスケーリングをPvEゾーン全体に適用したらいいのではないだろうか?」と自分たちに問いかけました。 この可能性を探るにつれて、私たちはこれを実践することで、オンラインRPGのジャンルで全く新しいものを作り上げることができるとすぐに気がつきました。 それが、初心者も熟練者も、全てのユーザーが楽しむことのできるDLCゲームパックです。 ESOはかなり大規模なゲームなので、色々なタイプの全てのプレイヤーにコンテンツを供給することが重要であるとわかっていました。 そして、レベルに関係なく、DLCを全プレイヤーに展開することは、その目標に取り掛かるすばらしい方法のように思われました。 私たちは全プレイヤーに向けた追加コンテンツを解放できることをとてもうれしく感じていましたが、ゾーン中に色々な種類のコンテンツを展開できるレベルスケーリングと新しい技術をもって自分たちが何を成し遂げたのか完全に理解しきれていなかったことは興味深いことでした。 DLCがリリースされてまもなく、優れたコンテンツよりもレベルスケーリングでついにレベルを気にすることなく、誰とでもギルドでプレイすることができるようになったという事実に、プレイヤーのフィードバックが多く集まったことに私たちは驚きました(うれしいことです!)。 ギルドは最高レベルのギルドメンバーが初心者とともにプレイすることのできるゾーンで募集イベントを開催し、みんなが楽しむことができました。 プレイヤーは友達(彼らの多くは長らくゲームにログインしていませんでした)をESOに連れ戻し、レベルの差が大きくても一緒にプレイすることができました。 すぐにゲームはよりおもしろく、より現代的になったように見えました。 ESOがより社会的で、グループを作りやすいゲームになっていることにプレイヤーが気付き、それをうまく利用したことを知って非常にわくわくしました。 言うまでもなく、コンテンツが一流のものであることも損なわれてはおらず、プレイヤーはクログ王(CV:森川 智之)による町の再建などに興味を持ち続けていました(ここでネタバレはしません!)。 もちろんこの教訓は長期間にわたってESOで非常に重要なものとなっていました。 オルシニウムでのレベルスケーリングの成功はすぐゲーム全体へのレベルスケーリングの実装に関する議論につながりました。 オルシニウムは約1年後に実装されることとなる One Tamriel を生み出したのです。 3. よい話はよい話 私たちは政治的な陰謀をゲームに取り入れるというアイデアをもってオルシニウムのストーリーに着手しました。 深く根付いた互いに向けられる疑惑(そして悪)をもった異なる派閥、そして宗教、権力、政治的陰謀がプロット全体に散りばめられたゲーム・オブ・スローンズのようなアイデアです。 オルシニウムに含まれるその他全てのものと同じように、ESOのコンテンツを開発するなかでもたくさんのことを学びました。 ストーリー展開をおもしろいものにすることでプレイヤーをゾーンに引き付ける方法、主要なクエストマーカーの近くに新しいコンテンツを導入することでプレイヤーの注意をそらす方法などたくさんの技術です。 こうして、オルシニウムを製作する際、ワールドとクエストに関わるチームはこれらの教訓を全て取り入れました。 その結果はとても素晴らしく奥深いもので、ストーリー展開は途切れなくゾーンと一体化したものとなりました。 ライターとワールド製作者はプレイヤーが探索を進めるとその周りで起こるわかりやすいストーリー展開を作り上げました。 プレイヤーがオーク王を助けると、オルシニウムの町はわかりやすく「完成した」ものになります。 ダガーフォール・カバナントがどうしてその状態になったのか、そして、本当はどれほど危ういのかをずっと詳しく知ることになるのです。 これらは全て視覚的に目立つ、一流のファンタジー映画を思い起こさせるゾーン内で展開します。 小さく愛らしいポケット・マンモスもここにいます。 4. エルダー・スクロールズのオークはすばらしい エルダー・スクロールズには10種類の主要な種族が存在します。 そして、彼らの大部分に関する多数の伝承やゲームプレイが様々なゲームで作られてきました。 オーク(またはオーシマー。彼らは自分たちのことをそう呼びます。)は格別に未知の種族です。 広大なタムリエルの歴史のなかで、旧オルシニウムは破壊され、オークは数百年ものあいだタムリエルをさ迷うこととなったため、故郷を持たないという事実がその大きな理由です。 彼らはひどく閉鎖的で偏狭ですが、遠大で詩的な作品を作り上げることができ、非常に几帳面な職人として知られています。 実際、彼らは他のファンタジーで見られる「オーク」とはあまり似ていないので、「オーク」という言葉にはやや語弊があります。 それどころか、彼らは洗練された戦士であり、主神であるマラキャスに深く傾倒しているのです。 私たちは、このとても細かい遊牧民の部族にぴったりの気風、建築様式、政治制度を考え出すために、伝承を深く掘り下げました。 オーシマーの未開拓の歴史に光を当てるため、彼らの舞台、ストーリー、故郷を作り上げることはとても楽しい作業でした。 5. レベルスケーリングで色々な種類のコンテンツを含んだゾーンが作り出せる ロスガー(オルシニウムDLCゲームパックに含まれるゾーン)をレベルにとらわれないものにすることで、このゾーンをゲーム内の他のゾーンとは違うものにできることがわかりました。 単純にプレイヤーのレベルを気にする必要がないからです。レベルの条件がなくなったことで、私たちは違う種類のPvEコンテンツをそのゾーンに導入し、プレイヤーをそこに導くことができました。 私たちのゲームにはいつもワールドボス(プレイヤーのグループが倒さねばならない敵)が存在しますが、彼らは他と比べてとりわけよいものとしては実装されていませんし、組織的にプレイヤーを彼らの元に導くクエストも存在しません。 オルシニウムでは、プレイヤーをワールドボスのもとへ導くデイリークエストを追加するという修正を加え、これらのボスに人気がでるよう、よい戦利品がドロップするように設計しました。 このことによってオルシニウムは素晴らしいソロのPvEストーリー展開、ワールドボス、そしてもちろん装備の獲得やより困難な闘いのあるパブリックダンジョンなど全てのプレイスタイルに対応する様々なコンテンツが存在するようになりました。 ※この記事は海外のニュースサイト「MMORPG」にて掲載された記事を翻訳した物です。