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Developer Deep Dive:伝説の書物

最新のDeep Diveシリーズでは、ESOのライティングチームへのインタビューを通して、タムリエルに登場する数々の興味深い伝説の書物がどのように制作されているのかについてご紹介します。

今回は、エルダー・スクロールズ・オンラインのリードライターであるBill Slavicsekとライター兼デザイナーのHelena Wachhausをお招きし、ゲーム内の数々の伝説の書物における制作のすべてを語っていただきました。「ファイアソング(Firesong)」とアップデート第36弾の時点で、皆さまが発見することのできる伝説の書物は約7,000冊(!)以上存在します!それらがどのように制作されたか、お二人に話を伺いました!


ESOの伝説の書物に関するインタビューの時間を設けていただきありがとうございます。まずは、エルダー・スクロールズ・オンラインに登場する伝説の書物とはどのようなもので、どのように使用するのか教えてください。

Bill:ESOの世界の本はいくつかに分類されていますが、主にクエストの本と、伝説の書物と呼ばれるフレーバーの本の2つに分けられます。

リリース予定のストーリーに味付けをして完成させることを目的に、私たちは伝説の書物を制作しています。メモや紙切れ、石板または実際の本など、書物の形式はさまざまです。通常は、発見可能なゾーン周辺で巻き起こっていることを取り扱い、その地域のテーマやキャラクター、場所、生物のいずれかに焦点が当てられ、プレイヤーに物語を提示する方法の一つと考えています。

伝説の書物にはあらゆることが記載されています。ESOの世界をより詳しく知るために最も便利なアイテムであり、クエストやダイアログ、視覚的なストーリーテリングの枠を超えています。書き留めることができるものなら何でも書物として扱うことができ、それを使ってこの素晴らしい世界をさらに探求することができるのです。


リリースが予定されているコンテンツに関する伝説の書物は、どのように制作されるのでしょうか?

Bill:チャプターやストーリーDLCの場合、通常はメインストーリーの主要ライターであるロアマスターと共にスタイルガイドとESOに追加したいフレーバーの本のリストを作成します。

この基本的なリストを出発点として、デザイナーやライターを含んだチームの全員で、リストに追加するアイデアを他にも提案し合います。そのリストの中からは、誰もが自由に書物を選ぶことができるようになっています。リリースの規模にもよりますが、一度に60冊から120冊の書物を制作します。

Helena:一般的に、見つかられる伝説の書物は多くありませんが、ダンジョンには興味深い要素がたくさんあるので、背景により焦点を当てたいと考えています。例えば、ダンジョンの悪役は自分の計画を説明するような余裕はないので、好奇心旺盛なプレイヤーが探しに行けるよう、その計画が綴られた書物を実際に用意することにしました。


しかしながら、NPCがプレイヤーに伝えられることは限られていますよね?

Helena:そうですね。いくつかの点では、悪役のモノローグには独自の説得力があります。しかし、ある種の複雑な、あるいは感情的な背景を伝えたい場合は、聴衆の前でそれを語るよりも、本やメモ、日記の方がより純粋に伝わる可能性があります。



ゲームには数多くの伝説の書物が存在します


特に気に入っているフォーマットやスタイルの伝説の書物はありますか?

Helena:個人的には、具体的な声やキャラクターの情報を伝えることができると思っているので、手紙とやることリストに取り組むのが好きです。長さの制約がないため、リストや手紙をどのくらい長くするかを自由に考えることができます。


伝説の書物の制作は、最初から最後までどういった工程で行われるのでしょうか?

Bill:まず、ゾーン内の食べ物や飲み物、生息する生物、訪れることのできる場所に旅の案内など、好きなトピックを多数挙げたリストを作成します。リリースごとに用意した共通のトピックに加え、新しいゾーンならではのコンテンツも追加します。

タイトルと多くのトピックを挙げたリストに、そのアイデアを具体的に説明した文章を1、2文記載します。あとは、その書物の担当者に調べて書き上げるよう任せます。

Helena:大抵は何か面白いものを制作できそうなトピックを選出します。説明文から考えを巡らせ、その伝説の書物の目的が何なのか、どんな情報をプレイヤーに伝えようとしているのかについて推測します。

The Elder Scrollsの世界やESOには数多くの書物が存在するため、入念なリサーチは欠かせません。誰かが既に手掛けたものの二番煎じにはなりたくないですから。

どのスタイルで書物を制作するのかを検討するには、十分な時間を費やします。歌や詩、ラブレター、レシピ、作業リストや歴史書など、利用できるスタイルはいくらでもありますから!もし私達に十分な知識があれば、その情報を伝えるために台帳や金融書類として制作することがあるかもしれません。

この段階で、色々な面白いアクセントやキャラクターが存在するため、少しキャラクターの声を意識して色々試します。その理由は、声を把握できれば雰囲気も決めることができるためです。というのも、本来は深刻で真面目な話なのに、面白おかしく書いてしまっては辻褄が合わなくなってしまいます。

私はWordに書き込んで、それを社内システムに変換することが多いですね。これにより、複数の形式のワードプロセッシングとスペルチェックを途中で行うことができるんです。そして、それを私たちが使用しているエディターに取り込みます。


チーム内の他のメンバーが新しい書物を見直すのはその段階ですか?

Helena:そうです。エディター内にある書物は誰でも読むことができ、Billがそれにメモを残します。

Bill:誰かが書物を完成させたら、自分たちが取り組んでいるゾーンごとの専用フォルダにそれを格納します。読むことは誰でも可能で、私はそこにあるすべての本に総括的な見直しを行っています。どれだけ広範囲にメモを残したかにもよりますが、編集作業のみで済む場合もあれば、ライターに返却する場合もあります。基本的に、伝説の書籍が2回目の書き直しを必要とすることはありません。

Helena:モチーフの本は別で、通常2、3回は書き直します!


それは何故でしょうか?他の伝説の書物よりもやや専門的だからでしょうか?

Helena:モチーフの本はより複雑で、他の複数のチームと協力することが重要です。例えば、ある防具について説明した後に、そのアートやマーケティングに関する変更があった場合は調整する必要が出てきます。また、伝承は不明瞭なものが多い傾向にあるので、ロマスターのMichael Zenkeが徹底的な編集を行います。


チーム内の審査が完了した後の工程は何でしょうか?

Bill:すべての本の審査が終わったら、ゲームの世界にいるプレイヤーが発見することができるようにコレクションに追加します。そして、物理的にゲームの世界に配置する準備ができていることをゾーンリーダーに伝えます。通常、フレーバーの本はどこにでも配置することができますが、特定の地域や場所に関係しているものであれば、そこに配置します。あるいは、特別な新しいタイプのモンスターに関連するものであれば、そのモンスターと遭遇する可能性のある場所で発見できるようになります。 ゲームの世界の物語の一部であるかのように見せるためにどうやって配置するかは、デザイナーとワールドビルダーに任せています。


その際に品質保証部門が加わり、再検討するのでしょうか?

Bill:品質保証部門は私たちの書いたものすべてに目を通しています。それが彼らの仕事の一部ではありますが、非常に助かっています。たまに、ライターが調べ上げたつもりが誤ってしまうこともあるため、スペルミスの発見に加え、品質保証部門から「この本にはXと書いてありましたが、クエストにはYと書いてありました。どちらが正しいのでしょうか?」という質問を受けることもあります。

最近、ワインに関する本を書く機会があったのですが、ライターも私もワインに関しては精通していませんでした。しかし、品質保証部門のチームメンバーに詳しい方がいて、より正確な内容となるような提案をしてくれたこともあります。


伝説の書物を書く上で学んだ最もクレイジーなこと、または最も深遠だったことは何ですか?

Bill:ビールとハチミツ酒の違いと、それらの製造方法が違うという点です。

Helena:始めのころ、鳥に関する本を書きまして、ブラックウッドに生息する鳥を正確に識別することができるようになりました。しかし、本当にニッチな知識なため、これからの人生でこの知識が役に立つことはないと思います。


あまり文章を書くのが得意でないようなキャラクターの伝説の書物を作るのは、難しいのでしょうか?

Helena:誤植の言い訳は正にこれですね!

Bill:本は書かれている内容が読者に伝わらなければ意味がないので、あまり間違わないようにしていますが、向こう見ずなリガートの執筆は面白かったですね。彼の日記のタイトルは、いつも「今日」という単純な表題なので、いつどんなことをしたのか分からない上、彼はただ思いつくままに日記を綴っていました。

Helena:デッドランドでは、何人かのスキャンプについて別々の本を書きましたが、彼らは冠詞を使用しないので、その文体を考えることがとても楽しかったことを覚えています。

Bill:私たちは信頼できない語り手という手法を用いることで、本が確実にある人物によって書かれたものであると読者に感じてもらえるように心掛けてゲームを作成しています。あくまでそれはその著者の意見であって、必要であれば反対意見、あるいは第三者の見解も提供しますが、The Elder Scrollsの世界ではプレイヤーの皆さまの経験こそが大切であると考えています。



いくつかの伝説の書物は、他の本よりも有名です

どのような本を書くのが一番難しいと感じますか?

Helena:モチーフ本に対して確固たる意見を持っている方々がいるので、ライターグループ間では物議を醸す題材ですね。私は気にならないのですが、表立ってモチーフ本を書きたくないと宣言する人がいるほど、これを書くことを嫌う人がいます。

Bill:私はモチーフ本を書いたことがありません。これに関しては他の皆さんに任せています!

歴史書を書くのは難しく、必ずその史乗について念入りに調べる必要があるため手間のかかる仕事です。新しい場所の歴史などを作り上げる場合は、一貫性を保つように、または必要に応じて少なくとも筋が通るように心掛けています。時には、デイドラの謎解きや呪文の本などを作成するといった骨が折れる作業が必要な時もあります。

Helena:私は詩を綴ることが苦手で、堅苦しい感じになってしまうため、チームメンバーに精査してくれる人たちがいてとても助かっています。私の初稿と、さらに2稿目もひどいものですから。

Bill:曲は書いていて面白いです。リリースごとに何曲か作詞し、そのうちのいくつかをオーディオチームに渡して採譜してもらうことで、ゲーム内で歌われる曲へと形作られていきます。作曲家兼オーディオディレクターのBradが作曲を手掛ける前に、私たちができるところまで作り込みます。リズムと歌詞が一致するように、私たちに変更を依頼してくる時もありますが、大抵は彼が編集してくれます。おそらく、モチーフ本の次に見直しが行われる本だと言えるでしょう。


立ち入ったことをお伺いしますが、お気に入りの本はありますか?

Helena:今まで書いた本の中で一番好きなのは、スキャンプのために書いたやることリストのうちの一つです。これはクエスト本なため、ゲーム中に明確な目的が設定されています。内容的には、デイドラとしての目的の概要と、彼がただの変わり者であることなど最後のあたりに2回ほどひねりを加えています。リリース当日には、この本を読んだ人がもっと探しにいきたいという内容のツイートを5、6件見かけて、私はこれに良い意味でとても驚かされました。

ですが、私のお気に入りの本は、(汚名にまみれた)チーズの本シリーズです。ばかばかしいところが大好きです。

Bill:このおかしな本を書くにあたって、私たちも知識を深める必要があり、どうやってチーズを作るのかについて調べ上げました!

Helena:チーズの本ばっかり読み漁りました!

Bill:私には2つほどお気に入りのカテゴリーがありますが、総じて言うと、私たちが書くものはすべて好きで、みんな私の子供のように思っています。私が書いたものであろうと、私のチームが書いたものであろうとみんな素晴らしいのですが、中でもスティボンズがオルシニウムで書いたやることリストなどがお気に入りです。この本はいつ読んでも面白いです。また、私が手がけた捜査官ヴェイルの本も大好きです。今では、進行中のシリーズが手に負えないほどの規模になったので、他の作家たちに協力してもらっています。

Helena:あなたに褒められるように私たちは頑張っていますからね。

Bill:それに皆も知っていると思いますが、本の内容がデザイナーにインスピレーションを与え、その何かが急遽ゲームの一部になる瞬間が大好きです。その例の一つがナルシス・ドレンです。ESOのシニアコンテンツデザイナーの1人Janet Pribloと私は、彼がクエストに最適なキャラクターだと思い、皆さまにもこの本当に嫌な奴を知って欲しかったので登場させました。そしてもちろん、その後彼に仕打ちができるように設定も忘れず行いました。


伝説の書物の内容がネット上で共有され、話題になっているのを見てどう感じますか?自分の書いた本に対する反応に驚くことはありますか?

Bill:もう最高ですよ。その反応から後に新たな発見をすることもあります。 私たちは皆さまが見て、読んで、体験できるためにこれを書いているのですから、それをしていないのだとしたら大変なことですよ!

Helena:皆さまがどんな作品に反応し、どんなものが好きで、どんな投稿やツイートが話題の的となっているのか確かめるのが、いつもすごく楽しいです。誰も気に留めないだろうと思っていた作品や、読んで少し笑った後に閉じてしまうような作品でも、いつも予想以上に多くの注目を集めていて、喜ばしいことだと感じています!


ESOの伝説の書物を共にここまで掘り下げてくれたBillとHelenaに心から感謝します。エルダー・スクロールズ・オンラインまたはThe Elder Scrollsのシリーズでお気に入りの本はありますか?TwitterまたはInstagramでお知らせください!


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